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ボルカノ・ベイ Act.2 _1

Category : volcano bay

Act.2 ―鳴動―

(一)

 グラウンドに短い笛の音が響く。体操服の生徒達が、バラバラと駆けていく。真面目な生徒もいれば、見るからにやる気のない生徒もいる。杏は?と聞かれれば、たぶんその中間くらいだろうか。やれと言われればやるけれど、率先して何かをやるとか、目標を持って頑張るとか、そういうことをした記憶がほとんどない。成績も真ん中。好きな子はいたけれど、告白なんてとんでもないし、されたことだってない。
 杏はノートを取っていた手を止め、三階の窓から外の景色を眺めた。そよりと白いカーテンがなびく。遠くに連なるニセコの山の稜線が、本格的な春の訪れを教えてくれていた。気付けばもう五月も中旬。遊馬と知り合ってはや約一ヶ月が過ぎようとしていた。

 校舎に終業のチャイムが鳴り響くと、
「キリーツ」
 ここぞと日番が立ち上がった。
 着席の声も待たずに教室の中がわっと騒がしくなる。
「……やばい!」
 と言うなり美月が振り向いた。「北大無理かも」とげっそりとした顔で首を振り、杏の机に突っ伏す。
「なんで?」
「数学サイアク。意味分かんない。リミットって何?極限って?それが私の人生でいつ必要になるのよ?」
「確かに」
 杏は可哀想にと首を振った。
「なまじ目標が高いと乗り越えなきゃならない壁もまた高いのよね」
「何それ」
「頑張れってこと」
 そう言って親友の頭を撫でる杏に、美月はため息をついた。
「杏、あんた受ける気ないでしょ、北大」
「なんで?」
「なんでって」
 美月はジト目で杏を見上げた。
「さっきの発言。まるで他人事みたいに聞こえたんだけど」
「そう?」
「それとも何?天変地異でも起きて急に私より賢くなったとか?」
「まさか」
「だよね」
「あ。何か傷つく」
 膨れてはみたものの、まるで説得力がない。
「絶対苦し紛れに私と同じ大学の名前書いたでしょ。進路希望」
「へへ」
「へへ、じゃないよ」
 まったく、と口を曲げて顔を上げた美月は、「それよりさ」と突然話題を変えた。さっきまでの仏頂面はどこへやら、今度はまるで探偵にでもなったかのように嬉々とした顔で手帳を開いてみせる。
「彼とはどうなったの?」
「彼って?」
 杏が首を捻ると、美月は「はあ?」と眉を寄せた。
「藤原さんに決まってんじゃん」
「アスマの事?メイジ牧場の」
「他に誰かいるわけ?」 鋭く美月が詰め寄る。
「カッコイイよね、彼」
「そうかな」
「幾つ上だっけ?」
「三つくらいじゃなかったっけ」
「ふーん」
 ……で、どうなのよ?と美月が覗き込む。
「どうもこうも」
 別に、と杏は首を振った。
「ピー子の写真撮りに行ってるだけだし」
「どうだか」
「何よそれ」
 杏はそっぽを向いて窓の外を眺めた。美月がつまらなさそうにその視線の先を追いかけた。渡り廊下で数人の男子がボールを投げ合って遊んでいる。かと思えば、ベンチの上にあぐらをかき、くだらないカードゲームを広げている集団もいる。まるで子供だ。

「そだ、写真見せてよ」
「今?」
 杏は美月に視線を戻した。
「持ってないの?」
「まあ何枚かは」
 机の横に引っかけていた鞄からファイルを取り出す。それを美月に手渡すと、杏はもう一度窓の外に視線を移した。
 何だか嫌な胸騒ぎがする。朝からずっと。それが何か分からないまま、杏はボンヤリと空を見上げた。春だから?それとももうすぐ生理だっけ?などと考えてみても、空から答えが降ってくるわけじゃない。すると美月が「わ!」と歓声を上げた。
「ちょっと杏、いいじゃん!」
「何が?」
 我に返った杏は、美月が見ている写真に気付いて「あ!」と叫んだ。
「返して!」
「ダメ」
 杏の手をヒラリと美月がかわす。その写真には、遊馬の横顔が映っていた。
「何が別に、よ」
 美月が杏の真似をする。
「違うんだって。これはアスマが撮ってくれって言うから撮っただけで」
「またまたあ。コレってどう見ても盗み撮りじゃん」
「違うってば!」
「いーからいーから」
「返せ!美月!」
 二人して騒いでいると、チャイムと同時に教室の扉が開いた。
「授業始めるぞー」 と、もっさりとした声の古文の北橋先生が教壇に登る。
「あとで聞かせてよね」
「ホントに何もないってば!」
 キリーツ、と椅子を引く日番の声に立ち上がりながら、杏は美月の手から写真をひったくった。

>>次へ

テーマ: 自作連載小説
ジャンル: 小説・文学

コメント

うふふ~

こんばんは、楓さん^^

なんだかもう、美月ちゃんと杏ちゃんのやり取りで、ニヤニヤと。
アスマくんの横顔写真、見られちゃいましたね。
うふふー、こういう話は女子同士食いつくからねー。
と、PC前でニマニマしている私は、ちょっと変な人になってます。

美月ちゃんの「それが私の人生でいつ必要になるのよ?」って言葉。
学生の時、凄く思ってたなぁ。
関数とけたからって、何になるのよ、とか。
ていうか、リミットって何?極限って何?と、素で思った私です。
数学は、高校の初めで諦めたので(笑

杏ちゃんの、嫌な胸騒ぎ。
そしてAct.2のタイトル「鳴動」
不安な気持ちのまま、次の更新待ってます^^

No title

こんばんは。いよいよAct.2の始まりですね!
美月と杏のやりとり、いかにも女の子って感じでとてもかわいらしいです。
そうそう、進路の悩みとか、恋バナで盛り上がったりとか、
色々あったよなあ…と、思わず自分の若かりし頃を思い出しました(笑)

この他愛ないやり取りの一方にある杏の胸騒ぎ、そして「鳴動」というタイトル。
平和な一コマの向こうに見える陰にどきどきしています。
次も楽しみに待っています!

観たい~!!

私も見たい!!!その写真~♪
横顔の素敵な男性は、好きです!!
隣にいて心地よいから♪

リミットって…ありました?
私も、素で、「??????」でした。
あ、そうか、数学も進歩していて、私の年代では知らないことだらけかな。
あるいは、文系では習わない分野!?
あったとしても記憶の彼方、たぶん当時も記憶していなかったのだと思いますが(笑
嫌な感じ。
その直感が、当たらないといいのだけど…あたっちゃうのかな~?v-388
トーナメント、残念でした~応援したのに…。
でも、楽しめますね~♪いろいろな方の文章を読みまくりました。
比較する、という目で読むから、偉そうな視線にはなっていますが。
そういう風に作品を読むことも、勉強になりますね♪
ジャンルでの募集があったら、もう少し白熱した感じになるのかな…。
掌篇小説のトーナメントもいいかもです♪

可愛い♪

まさしく!女子バナはこんな感じです♪
楓さん、よく知ってるな~(笑)
進路のことも、恋のことも。話が尽きることがなかったなぁ、あの頃は。
あ、今でもか。
女子が集まれば会話が途切れることないから^^;(笑)

いつか。
私、楓さんとらんららさんとkazuさんに会いたいな。なんて、ふと思ったりして^^
その話はまた、置いておいて…

杏ちゃんの胸騒ぎ。怖いです。なんとなく、感じる人も多いはず。生き物ってそういった予知的なモノも備わっていると思うんです。理屈じゃなくって。
だから、例のことなのか。もしくはピー子とか?遊馬とか?
それより、両親のことだったらどうしよう?なんて、どんどん妄想が膨らんできます@@;

続き、楽しみなような怖いような…
また来ます!^^

>kazuさん

こんばんは。
遊馬の横顔はもう少し伏せておくつもりだったのですが、プロットの都合上こうなってしまいました。ちょっと不本意ですが仕方ないです。女性は好きですよね。本当に。職場の昼休み、派遣の女性がお弁当を持ち寄ってよくこういう話をしているのが聞こえてきます。笑

極値、微分積分、それどころか、下手すれば円周率でさえ、普段生活する分には必要ないですもんね。正直、僕でさえあれは必要な知識だったんだろうかと思うことがあります。

ところで、これ書いてて思ったんですが、今の高校三年生の春って、数学で何習ってるんですかね?一応調べてみたつもりで入るんですけど、あってる自信がないですわ。汗

不安な気持ちのまま……そうですね。
でもまだもすこーーーーーーしこの和やかな空気にお付き合いいただこうかな。
また来てください♪

>沖川さん

こんばんは。
はい。Act.2始まりです!
とっても、別段Act.1と変わらぬ雰囲気ではじめてしまったのが何というかちょっと自分的に納得いかないのですが(汗

ああ、よかった。
皆さんのコメントを拝見していると、少なくとも皆様には「共感」していただける会話になっていることが確認できました。あとは皆様と今の十代の子とのジェネレーションギャップがどれぐらいgpkぐあっplwww←

平和な一コマの向こうに見える影……
ふふ。
非日常は足元でくすぶっているものなのです。しばしお待ちを~
ありがとうございます。
是非またお越しくださいませ♪

>らんららさん

こんばんは。
見たいでしょー!僕も見たいから描いて♪をいこら

リミットありませんでした?
もしかしたら、学校によっては習わない事もあるのかもしれません。が、さあどうでしょう?らんららさんの脳内で完全に亡き物として扱われている可能性も否定はしませんけどねー。笑

トーナメントは残念でしたね。
でもまあ仕方ないです。自分に力がなくて相手の方が素晴らしかっただけのこと。また機会があれば参加したいです。それよりまずはchachaさん頑張れ!ですよね♪

掌編小説トーナメント!
いいですねそれ。
ユーザーならだれでもトーナメントを立ち上げることができるみたいですし、ここはいっちょその実現に向けて、第二回掌編小説やってみますか?

>chachaさん

こんばんは。
よしよし。女子トークの壁は何とか越えれそうで良かったです。
あとは皆さんと今の十代の子たちとのジェネレーションギャッぐふぁああ←また(笑

女子って集まるとホント話が止まらないですよね。
暑いのに家の前でまーよくしゃべることしゃべること、家に入ったらいいのに!!!みたいな(笑

あ!それ僕も夢です!!
いつか皆さんと直にお話しできる機会があったなら、それこそ尽きることはないんだろうなあって思いますよ。すっごい聞いてみたいことが山ほどあります。そりゃもう星の数ほども。でも、素敵女性に交じるおっさんひとり……あ、ちょっとイギリス旅行行った時のトラウマがwww←詳しくは「the street of London」にて近日?公開予定。

杏の胸騒ぎ。
第六感みたいなものでしょうか。
特に女性のそれはすっっっっっっっっっっっっっっっっっごい当たりますからね←経験者?爆

またいらしてください。待ってます♪
てか、トーナメント決勝!!応援してますよ!!!
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楓 十色

Author:楓 十色
仕事との両立に悪戦苦闘しながら、それでも物書きを止められない人。工学博士(防災工学専攻)、技術士(建設部門)。

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