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ボルカノ・ベイ Act.2 _2

Category : volcano bay

「……それで?」
 放課後、杏と美月は並んで自転車を走らせていた。
「何がよ」
 洞爺湖の湖面に二人の陰が揺れる。
「何がよ、じゃないでしょ」
 美月のスカートがフワリと舞う。
「藤原さんの写真」
「しつこいなあ。何もないって言ったじゃん」
「へー」
 美月はあからさまに疑いの目を向けた。
「な、何よ」
「別にぃ」
「もう……」 杏は不意に自転車を止めた。
「何もないって言ってるのに!!」
「えーでも」
「ホントにたまたまピー子の写真を撮ろうとしたらアスマが顔出して、それで一緒に映っちゃっただけなんだから!!なのに美月ってばすぐそうやってからかうから」
「分かった分かった」
 ごめん。と美月は自転車を降り、杏に向かって頭を下げた。

「そんなに怒んなくてもいーじゃん」
 数分後、コンビニから出てきた二人の手にはいちごカプリコが握られていた。杏に奢らされたのだ。もっとも、それで機嫌が直るのだから安いものだが。
「だってしつこいんだもん」
「はいはい」
「反省してない」
「してるって」
 二人は片手でハンドルを握りながら、再び自転車を走らせた。
「ま、今回は許したげる。カメラって面白いなってまた思えるようになったのも美月のおかげだしね」
「ですよねー」
「……もう」
 杏は美月を軽く睨みつけ、林の向こうに目を向けた。遠くに牧場のサイロが見える。
「でもさ」
 口をもごつかせながら美月が尋ねた。
「なんで一度止めちゃったわけ?中学の頃なんか毎日持ってたのに」
「んー」
 杏は口を尖らせた。答えに困った時、杏はいつもこんな口をする。
「こんなの乙女の趣味じゃない!って気付いたとか?」
「うんん」
「二の腕が太くなったとか?」
「何それ」 杏はケラケラと笑った。
「ママから聞いたの。パパも写真を撮るのが大好きだったって」
「へえ」
 それで?と美月が促す。
「一緒ね、って言ったんだ。ママ」
 杏は大きな口をあけて残りのカプリコを放り込んだ。
 もちろん、その時の雪乃の言葉に他意はなかったのかも知れない。けど急に怖くなった。もしかしたらママは自分の事も嫌いになってしまうんじゃないかと。
「それで止めたんだ」
「……うん」
 まあね、と杏は頷いた。
 それから思いっきり自転車をこいで美月の前に出ると、今度は大声で「でもね!」と続けた。
「もうなんかそう言うの止めよって思ったんだよね」
「そう言うのって?」
「何て言うのかなあ。親の顔色見て行動するみたいなところ」
「ああ」 と美月が頷く。
「あんた昔からそうだもんね」
「でしょ。進路希望の紙渡されてもさ、よぎるのはママの顔ばっかでぜんぜん自分のしたいこととか思い浮かばないんだもん」
「杏らしいよ」
「まーね」
 笑いながらカーブを曲がる。大きく右端から左の側道へ。対向車がないからいいようなものの、担任に見つかりでもしたら大目玉だ。
「でも吹っ切れたんでしょ?!」
 真っ先に坂を下りながらスカートをなびかせている杏に、美月が大声で呼びかけた。
「美月とピー子のおかげでね!」
 杏の答えは明快だった。
「そっか」
 良かったじゃん、と微笑むと、美月も思い切りペダルを踏み込んだ。
 ひとしきり春風を切って自転車を走らせた後、二人は少し開けた脇道から湖畔の芝生に転がり込んだ。は、は、と息を整える。杏の視線の先に、何週間か前に父が講演をしていたビジターセンターが見えた。
「……そう言えばさ」
 汗で張り付いた前髪をかき上げながら、杏が口を開いた。
「この前パパを見たんだ」
「どこで?」
「あそこ」
 寝ころんだまま振り向いた美月にセンターを指さす。
「ま、それだけなんだけどね」
「それだけって……何か話したの?」
「ううん。遠目に見ただけ」
「ふーん」
 そっか、と言ったきり口よどむ美月に、杏はふと思い出した様子で顔を上げた。
「そだ。言い忘れてたけど、会場に入る時に名前書かないといけなかったから、思わず美月の名前使っちゃった」
「ちょっと!」
 咄嗟に美月が跳ね起きた。
「勝手に親友の名前使わないでよね」
「言うと思った!」
 杏が手を叩いて笑うと、二人はじゃれ合うように芝生の上を転げ回った。

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テーマ: 自作連載小説
ジャンル: 小説・文学

コメント

こんにちは^^

どうもです、楓さん。
ご体調は、いかがですか?
あまりご無理なさらないで下さいね。
お仕事もあるし、大変ですよね。
本当にお疲れ様です。

杏ちゃん、怒っちゃいましたね。
しつこいとね、そうそう、こう……がーっ!と(笑
で、いちごカプリコで許しちゃう。可愛いなぁ、杏ちゃん^^
ものじゃなくて、許す&許されるきっかけですよね。奢りって♪
素敵な友人関係だなって、思います。

お母さんにいえない、お父さんの事。
いろいろと思うこと。
それを打ち明けられる友達がいてくれる事。
美月ちゃんの存在は、とてもとても大切なものですね。

続き、楽しみにしてます^^

>kazuさん

こんばんは。
はい。もうすっかりいいです。
お気遣い下さり、ありがとうございます。

いちごカプリコは最強のアイテムです。僕にとって。あれで大概のことは許しますね(えw
持つべきは友ですよね。
僕は人付き合いが得意な方じゃないので、こういう友達ってホント少ないんですよ。だから、ちょっと理想的に書いてしまっている部分はあると思うのですが、でも、女の子って結構こういうとこハッキリしてそうなイメージはあるんですよね。だって、普通に手繋いだり腕組んだりするじゃないですか。男同士じゃあり得ませんからね、絶対。

杏は色々思いがあって、抱えきれなくて放電してるんです。
親のこと、将来のこと、遊馬のこと。
美月は貴重な存在です。
杏にとっても、この物語にとっても。

さて、次回更新では再び「星街」にカメラが切り替わります。そろそろ不穏な空気が流れ出すのかな。

またまたお邪魔いたします

紺野さん、こんばんは!

杏の気持ち、良く分かります!
私もしつこくされるとキレる質です(笑)
私なら和菓子で手を打つ所ですが。

それにしても、美月ちゃんは良い子ですね。素直でとてもかわいいです。
物語の中で、彼女が今後どういうポジションになるのか分かりませんが、
この素直さがキーになるのかなという感じがします。
(勝手な予想ですが!)

続きも楽しみにしていますね。
またお邪魔致します!

青春だ~♪

いいですね、こんな友達がいるって(^_^)
実は私、立ち位置的に言うと美月タイプかもです(笑)結構うっとーしいかも( ;´Д`)
カプリコ、美味しいですよね~!先日たまたまイチゴ味を食べたばかり…うふふ♪

カメラの話。そういった裏事情があったんですね…
杏ちゃんは色々と自分の胸に押しとどめるタイプのようだから。美月ちゃんが心の拠り所になってるのかな?

風を切って自転車をこぎながら、大声で会話する様。ちょっと昔の懐かしい思い出を引き起こしてくれました(*^^*)風の薫りが漂ってきましたよ~♪

さてさて?何やら動きがあるようで…
ドキドキしながら、続き楽しみにしています♪

>沖川さん

こんばんは。
もうもう、何度でも遊びにいらしてください!
沖川さんもキレるんですね。意外だ。そして和菓子で手を打たせる……想像通りだ。ってどんなイメージ持ってるんだ僕は(笑

美月は著者としてもすごく使い勝手のいい優等生ですね。
彼女の今後のポジション……どき。そこ、まだ大筋のプロットの中にどう組み込もうかと思案中だったりするんですけど(汗

でもですね、杏の気持ちを後押しできるのは、美月か遊馬しかいないような気もするんですよね。なので、美月はきっとこの先も活躍の場があると思います。ただねえ、んー、当初そんな重要なポストに置く予定はなかったという、まあよくある話ですが(^_^;)

どうぞまた遊びに来てください!

>chachaさん

こんばんは。
美月人気だなあ(笑
確かに可愛いんですよね。この子。面倒見良くて賢くて、機転もきいてそのくせ偉ぶってなくて可愛らしい。うおおおお、最強じゃまいか!大丈夫か杏!何が?ww

そしてchachaさんが美月!!
うあー、分かる気がする。そんな気がする!…て、あれ?鬱陶しく聞きまくってあげく奢らされるタイプ、というそっちの方ですか。笑

カメラの理由、こういうことでした。
杏は人の顔色見て物事を決めるタイプなんでしょうね。そして、気づかないうちに自分の中に押し込めてしまう。それは、もしかしたら両親の離婚とも関係があるのかもしれませんが、その辺、巧く盛り込んでいけるかは僕次第だなと。責任重大だ。

自転車の下り、ちょっとゆずの歌を思い起こしながら書いてみたり。ちょっと恥ずかしいほどの青春な風景ですが、実際この頃ってこういうところあるじゃないですか。ね、chachaさん♪

はい。次回から舞台が変わります。少しずつ、なのです♪
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楓 十色

Author:楓 十色
仕事との両立に悪戦苦闘しながら、それでも物書きを止められない人。工学博士(防災工学専攻)、技術士(建設部門)。

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