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ボルカノ・ベイ Act.2 _8

Category : volcano bay

 すぐに杏を見つけた遊馬は、往来する車をやり過ごし、小振りのリュックを右肩にかけて歩いてきた。
「待たせたな」
「うん」
 杏はソフトクリームを舐めながら、あれ?と首を傾げた。
「一人?」
「それなんだけどさ」
 遊馬が言いにくそうに視線を逸らす。
「先輩、急にダメになったって」
「嘘!」
「いやマジで」
「えーーーーーーーーっ!」
 ちょっと何それ?と杏が突っかかると、遊馬は「ごめん!」と両手を合わせた。
「担当の仔馬が疝痛起こしてさ、どうしても抜けられなくなったって」
「せんつうって?」
「腹痛」
「そんなの梅干し飲ませば治るっしょ」
「人じゃないんだから」
 馬鹿か?と呆れる遊馬に、杏はソフトクリームを投げつけてやろうかと本気で考えた。
「……で」
 と、代わりにふくれっ面で切り返す。
「どーすんのよ?バンガローってその先輩の物なんでしょ?」
「ああ」
「じゃダメじゃん」
「そうだな」
 遊馬はあっさりと頷いた。
「悪いがまたの機会ってことで」
「えー!ちょっと待ってよ。すっごい急いで用意したのに。見てよこのリュック。アスマなんかより全然荷物多いんだよ」
「重そうだな」
「あったり前でしょ。撮影機材一式よ。何なら持ってみる?大変だったんだから」
「けどさ」
「けどじゃなーい!」
 杏は店の脇にへたり込み、呑気に杏のリュックを持ち上げてみたりしている遊馬をじと目で見上げた。
「楽しみにしてたんだから」
「すまん」
「重かったんだから」
「ホントにごめん」
 でも……と遊馬は続けた。とは言え、相変わらず歯切れは悪い。
「一応さ」
「何?」
「いやその、一応鍵は預かってきたんだ」
「へ?」
 何の?と杏が尋ねると、遊馬は有珠の山頂を指さした。
「使っていいって?!」
 途端に杏が立ち上がる。ところが遊馬は杏を押し戻し、「でもやっぱ無理だわ」と苦笑いを浮かべた。
「何で?今日みたいな快晴滅多にないのよ。せっかく綺麗に撮れそうなのに」
「問題がある」
 そう言って遊馬は言葉を切った。
 そう、重大な問題が。それはつまり、
「先輩がいないってことは、今夜俺とお前の二人っきりってことだ」
「あ」
 杏は立ち上がったまま固まった。
 それはそうだ。元々二人きりじゃないと聞いたからOKしたのだ。それを今さら二人だなんて……
「な。やっぱ無理だろ?」
 遊馬はポンと杏の頭を叩くと、「送ってくよ」と言って杏の荷物を持ち上げた。それでも杏はむくれたままだ。
「今度何かで埋め合わせするから」
 仕方ねえな、と遊馬が杏の手を取ろうとしたその時、館内放送が流れた。

『間もなく本日最後のロープウェーが発車します。ご利用の方はお急ぎ下さい』

 放送は周りの雑音を巻き込みながら、おもむろにブツと途切れた。
 ポリ、と遊馬が鼻を掻く。
 杏が顔を上げると、山頂から降りてきたばかりのロープウェイに乗り込んだ観光客達が、楽しそうに出発の時を待っている姿が見えた。
 ――悔しい。
 それに、考えれば考えるほど腹が立つ。
 本当ならあれに乗って有珠の山頂に向かい、外輪山の遊歩道を歩いてコテージに向かう予定だったのだ。そしたら三脚を置いて、カメラをセットして、満天の星空の中、自分だけの写真をフィルムに焼き付けるはずだった。それなのに……
 途端に杏の足が止まった。
「……おい?」
 遊馬がその顔を覗き込む。何だか嫌な胸騒ぎがした。
「行く」
「は?」
「やっぱ行く」
「行くってお前……」
 遊馬が言い終わるよりも速く、杏は食べかけのソフトクリームを口に放り込み、自分のリュックを引ったくった。
「ちょ」
「早く!ロープウェーが出ちゃう」
「おま」
「絶対!」
 クルリと向き直り、杏は自分より頭一つほど背の高い遊馬の顔を見上げた。
「変なことしないでよ」
 パチリと目が会う。
「当たり前だろ。てか、そう言う次元の問題じゃねーし」
「うるさい!」
 杏は一喝すると、観光客が並ぶロープウェー乗り場へと足早に歩き出した。
「……マジかよ」
 はあ、と深いため息をつく。
 遊馬はリュックを背負い直し、ずんずん人混みに紛れていく杏の背中を慌てて追いかけた。

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テーマ: 自作連載小説
ジャンル: 小説・文学

コメント

うきゃ~~

いやん♪私も杏ちゃんと同じく、はっきり言われないと気付かずはしゃいじゃうかも(笑)あ、そうか!二人っきりになっちゃうのね!?って。鈍感かしら^^;
遊馬、恋愛感情とまではいかなくっても。男の人ってやっぱりそうなんですか?女の子と二人きりだと、気まずいというかマズイんじゃ…ってなっちゃうんでしょうか??そこの辺り、私もよくわからなくて。
周りの友達に度々注意を受けておりましたが(笑)

うん。でも、やっぱりせっかくだもの。杏ちゃんの気持ちがすごーくわかるから♪いい写真、撮れるといいなぁ^^
遊馬、変なことしちゃダメだよ~!ちょっとなら、いいけど(どっちやねん

はー。二つの意味でずっとドキドキしっぱなしです><
手に汗握る…といいますか、本当に汗かいてPCに汗染みが(笑)
楽しみにしてますっ♪

ふふふ

うわ~、うわ~、と、読みながらにやにやしてしまいました。
杏ちゃんの気持ちも分かるけど、でもでも!二人っきり!!
まあ、遊馬なら大丈夫かとは思いますけれど……?
でも、何かしら進展して欲しい気もします(笑)


星街と有珠山頂、それぞれで星を待つ人々の間に何が起こるのか。
ドラマが大きく動きそうな予感がしますね。
楽しみにしています!


>chachaさん

え?
chachaさんてそういうタイプでしたか。
気づかず男心をもてあそび、「え?全然そんなつもりないけど」男がびーん!!みたいな(どんなだww

そうですねえ。基本女性と二人きりってなったら「いやいやまずいっしょ」て思いますけどね。ま、よほど仲のいい知り合いならあんまり気にならないし、チャラ男さんとかそういう方はどうだか知らないですけどね。少なくともこの遊馬と杏の状態なら、僕は遊馬と同じ反応をします。

杏、自分の衝動を抑えられません。
まあ遊馬だし大丈夫ってどこか高をくくってる部分はあるかも。
で、え?え?ちょっとならいいのchachaさん!!!じゃあお言葉に甘えて(をい

あ、はい。水面下では少しずつな感じで♪

>沖川さん

こんばんは!
ですよねーもういい加減何とかなれよと、美月に脇腹つつかれっぱなしなので(笑
でも、正直そんなよく知ってるわけでもない男性と二人っきりでお泊りとかまずいですよね。しかも杏はまだ高校生!!
しーらね。
しーらね!w

>星街と有珠山頂、それぞれで星を待つ人々の間に何が起こるのか。
いいですねー!
こういう沖川さんのちょっとした言葉遊びが好きです。

そろそろ物語が動きます。
もう少し。もう少しだけ待っててくださいませー!!!><

まぁまぁ☆

おはようございます。

むふふ、二人きり~♪
いいっ、このニヤニヤ加減が凄くステキッ。
杏ちゃんの、写真への情熱は格好いいですね。
星を撮りたいというその気持ちが、凄く伝わってきます^^
けど、二人きり~♪

私は、二人きりだ~どうしよ~、とか思いながらも流されていって、でも改めて「二人きりだから」とか言われたら途端に我に返って「やっぱやめよう!」とか言い出す派ですかねぇ。
……だめじゃん(笑
こういうのって、男性の方が気にするのかもしれませんね。
やっぱり、そこは、うん。

くふふ、アスマくんの心中如何に(笑

続き、楽しみに待ってます~^^

>kazuさん

こんにちは。
はい。結局二人で行くことになった杏と遊馬。
前途多難です。
どうなっても僕はもう責任取りません(え
杏はですね、たぶん、目標のない流されるがままだった今までを変えたいという思いがあるのかも知れません。だから、何かに夢中になりたい。もしこれがダメだとしても、納得できるまでやってみたい。その裏には、同じくカメラが好きだった父に対する杏なりの思いがあるのかも知れません。どだろ?分かりませんけど。あはは

なんか、みんな押しに弱いんですかね?ふむふむ。つまり、やっぱ男には強引さも必要なんですね。よしよし(何が?ww

続き、週明けになりますね~♪

おお~

なるほど。
杏ちゃん、心から「やりたいこと」や「なりたいもの」が見つからない状況で、
これほど熱心に行動できる。
もちろん、ほんのりした恋愛感情もあるけれど。
きっと、目標や夢のある遊馬に刺激を受けるんだろうなぁ~。

コメントに来た皆さんは流されるタイプ。
うん。女性はそういうのがいい。でも。
最初から、遊馬が「二人でも行く」という態度だったら、逆に突っぱねますよね。
こちらのことも考えてくれているのか、と思うし。
そのあたり、彼の気遣いの深さは、楓さんの人となりと重なりますね~♪
もちろん。本人の自制心に対する自信のなさが表れていることもありますが♪
男性のそういうところは可愛いなぁ~
(かわいいとか言われるとさくっと傷就いちゃう男性もいますね…そういえば^^;)

もうこのまま恋愛路線突っ走ってほしい~
もう少し、あま~い気分を味わえますよね♪
期待してます~♪

>らんららさん

こんにちは。
病み上がり楓です。まだ会社には行けてませんが、自宅療養中でもPC解禁な感じです。笑

杏の行動は、まさにそんな感じですね。きっと。焦ってるんですよ。何かに焦って、一生懸命頑張ってみてる。でも、そうやってもがいているうちに見えてくるものもあるわけですよね。がんばれ杏。

遊馬はちょっと僕に似てるかなあ。自信ないところとか、割と押しの強さに弱かったりとかそういう部分。自制心に対する自信のなさ……うあああああ怖い!らんららさん怖い!何で分かるの?どこからそこまで読むの?!

このまま……ええ、もう少しだけ(笑

ぷ、ふふふふ♪

思わず笑ってしまって~!!
体調悪いのにそのテンション!さすがです(笑
でも、ほんと、無理しないでくださいね~。

>自制心に対する自信のなさ…
妄想の域です、すでに。
男心、理解度88%くらいは行ってますか?(^^)b

いってますね

88%どころか限りなく100に近い99%くらいじゃないですか?
あはは

ちょっと寝てきま-す(^_^)/
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楓 十色

Author:楓 十色
仕事との両立に悪戦苦闘しながら、それでも物書きを止められない人。工学博士(防災工学専攻)、技術士(建設部門)。

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