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1000文字小説 僕らの夏

Category : 掌編小説

やっと書けた。書けました。推敲に丸二日。何とか1000文字!
お題は「嘘」
BGMはずばり、「僕らの夏の夢」山下達郎です。クリックでYou Tubeにジャンプします。
ではどうぞ♪


 ヒグラシが鳴いていた。
 ペンキの剥げたジャングルジムの向こうに、朱色に染まるマンションの窓が並んで見えた。
 ベランダの洗濯物を取り込む人、布団をはたく音。
 買い物帰りのおばさんの影が、長く伸びた僕らの影と重なっては離れていく。
「いち、に」
 と数えながらボールを蹴る。失敗して転がったそれを拾いに行っている間も、あいつは黙々と同じリズムでボールを蹴り続けていた。
 右、左、右、左、
 額に浮かぶ汗を拭おうともせず、飄々とリズムを刻んでいく。
 それを鉄棒にもたれて見ていると、「何?」とあいつが足を止めた。
「えっと」
 僕は咄嗟に言葉を探した。
「明日で夏休み終わりだね」
「うん」
 あいつが器用に足先でボールをすくう。
「……あのさ」と僕は言った。
「そのボール貸してよ」
 あいつはもう一度足を止めた。
「何で?」
「いーから!」
 僕は強引にボールを取り上げ、「返せよ!」と詰め寄るあいつを押し返した。
「今日だけでいいんだ。代わりに僕の貸すから。な、友達だろ?」
 お願い!と手を合わせると、あいつは渋々口を尖らせた。
「明日返せよ」
「おう」
 七時を告げるサイレンが鳴る。僕らは拳と拳をぶつけ、いつものように「また明日」「またな!」と言って手を振った。

 玄関を開けると、下駄箱の脇に段ボールが積んであって、本とか、オモチャとか、色んな物が放り込まれていた。代わりに、テーブルに見慣れない服が置いてあって、
「何これ?」と尋ねると、
「新しい学校の制服よ」と母さんは言った。
「四年生は名札の色が緑色なんだって」
「ふーん」
 制服のことなんてどうでも良かった。
「俊希くんとちゃんとお別れできた?」
「うん」
 僕は曖昧に頷いた。
「……ごめんね」
 と母さんは目を伏せた。今度は長くいれると思ったのにね、と髪をかき上げた横顔に、僕は笑顔で返した。
「見てほら!サッカーボールを交換したんだ」
 ボロボロに使い込まれたあいつのボールを得意げに見せると、母さんは少しだけ笑ってくれた。

 次の日の夕方、走り出した車の窓から、いつも二人でいた公園でボールを蹴るあいつの姿が見えた。
 右、左、右、左、
 見慣れたリズムが胸に響く。
 離れていく。
 あいつの背中が小さくなっていく。
 ごめん、ごめんな、と唇を噛み、あいつのボールを抱きしめていると、不意に父さんが車を止めた。
 顔を上げると、助手席の母さんと目があった。
「すぐ戻るから!」
 ボールを抱え、転げるように車を飛び出した僕の頭上に、夕焼け雲が広がっていた。

.

テーマ: 自作連載小説
ジャンル: 小説・文学

コメント

うわ~!;;

楓さーーん!!
私コレ、どんぴしゃにストライクゾーンすっぽりおさまりましたっ!
すごーく、すごーく素敵っ!素晴らしいっ!><。
この短い文字数の中に、しっかりと描写も含ませて。
一つ一つの光景が、自然と目の前に浮かびあがって。
とても綺麗で、主人公の気持ちも手に取るようにわかって。
もう、申し分ない作品でした!;;

最後、車の中で友達の背中を見つめながら心の中で何度も謝っているシーンに涙、涙。
でも、それで終わらせない楓さんの優しさにまた涙;;
ちゃんとお別れ言えたかな?余韻までも素敵で、心がとても温まりました♪

さすがオオトリなだけあります!サイコーでしたよ~!^^
(あ、でももしや他にも参加される方がいらっしゃるかもですから、ここだけの話で。笑)

うん。やっぱり楓さん、すごいです!
頭の中で山下達郎がエンドレスで流れてます(笑)
ありがとうございました♪

>chachaさん

こんにちは。
これ、結構大変でした。
初稿で1500文字。そこから推敲を繰返し、それでも収まらなくて、ラストシーンを一行で仕留めるハメになったのですが、これがなかなか。
他の更新ストップ、読書もストップ。
仕事も手につかず、夜も眠れず……は大袈裟ですが(笑
ちょっとした苦行ですね。
でも、それもchachaさんのコメントを拝見して吹き飛びました。この二日間の労力が報われた思いがします。
こちらこそありがとうございました!

題材はありふれた「別れ」ものです。
実はもう一つ浮かんでいたのですが、最終的にこちらを取りました。
"僕"は二つの嘘をついた。
一つは友達に、一つは親に。
嘘をついたままで終わらせたくなかったんです。なので、最後はああいう形にしてみました。
"あいつ"に対する仄かな憧れ。それゆえ言い出せなかった"僕"の胸の内とか、ついてしまった嘘に対する後悔とか、親の都合で離ればなれになる苦しさとか、そう言うものが伝わればいいなと。

山下達郎、いいですよね。
サマーウォーズも観ました。いい映画でしたよ。

ふはぁ……

おはようございます^^

胸がいっぱい、て、感じです。

翌日、この場所からいなくなる”僕”。
転勤の多いお父さんのお仕事で、きっといくつかの別れを経験してきて、両親を困らせるどころか反対に気遣える”僕”。
彼がついた二つの嘘が、暖かくてそして切ないです。

なんとなく。
俊希くんと、その俊希くんが同じリズムでボールを蹴り続ける行動。
翌日も同じ場所でボールを蹴り続けている俊希くんの姿。
”変わらない時間”を感じる事ができて、”僕”が一番願っているものなんだろうなって思いました。
その場所に、自分もずっといたかった、と。俊希くんと一緒に。
なんだか、交換したかったボールが。
その一欠けらを持っていたい”僕”と、一欠けらでも存在していたい”僕”とそんな風に思えて。
深読みしすぎな感じもありますが(笑

両親についた嘘。ちゃんと親は気付いてくれて。
最後、俊希くんに会いにいけて、きっとお別れを伝えられたんだろうな。
嘘をついたことを、ちゃんと謝れたんだろうなって。
そして、その上でボールを交換できていればってそう願います。

あぁ、夏休み最後の日。そして今日は三十一日。
”僕”はこの街を出て行く。
きっと今頃ボールを見つめながら、俊希くんのことを考えてるんだろうな。

素敵なお話でした^^
凄く感動しましたーっ!

>kazuさん

こんにちは。
ここまで読み取って下さるとは嬉しい限りです。
ありがとうございます。
"あいつ"が刻み続けたリズムは、まさに、何も変わらない時間、日常の象徴です。ただ、"あいつ"にとっての日常は、"僕"にとってかけがえのない時間だったんですね。
もしかしたら、"僕"には分かっていたのかも知れません。いつか、また、僕はこの場所から居なくなる、ということに。そんな中、出会った友達。自分より遥かにサッカーが上手な友達。"あいつ"は毎日そこにいて、毎日ボールを蹴り続けている。そこに自分もいたという証が欲しかったのかも知れません。

やー
嬉しいです。
子供ネタ+お別れ(引っ越し)という禁じ手?に近いありきたりな設定でしたが、それだけに下手こくわけにもいかず、どきどきしていました。こうして素敵なコメントをいただけてホッとしています。ありがとうございます。

そう言えば今日は八月三十一日。
奇しくも夏休み最後の日、ですね。

きっと"僕"は"あいつ"にお別れを言えたと思いますよ。それに、いつかまた会おう!って約束も。

No title

ああ、いいですね。
子供の嘘をちゃんと見抜いてくれる親って。
そういう親になりたいものです(感想ではなく希望か(--;)

千文字の中に収められたドラマが凄い。
変わらない日常は普遍的だと信じて疑わないようなアイツの描写。
それを見つめる僕の心。
良好な親子関係(だから僕はイイコで涙が出る(;;)
ふたつの嘘、一気に解決!

きっと何年後かに二人はまた会えるよ、と思える爽やかなラストでした。
今回も素敵作品をありがとうございます♪

>くらちゃん

ぎゃぼ!
今ボルカノを更新して管理画面から帰ってきたら、とても嬉しい訪問が!!ありがとー♪

正直、すべて見抜いていたわけじゃないとは思うんです。でも、何となく「もしかして」って思うことはあって、朝から落ち着かない仕草だとか、車の中の様子だとか、そう言うちょっとした変化に気付くんでしょうね。

変わらないからこそ日常であり、普遍なんですよね。"あいつ"は"僕"のような経験がないから、それがいかに大切なものかが分からない。分からなくて当然なんです。でも、きっと"あいつ"は今日、初めて「当たり前のもの」がなくなることに対する悲しみ、切なさを知ることになるんだと思います。
そうやって子供は成長していくんだよね←知ったふうな(笑

ラストは少し悩みました。
初稿では、また少し違っていたんです。
でも、帰り道にふと思いついた。それがなければ、何とも締まらない物語になっていたことでしょう。危ないww
でも、その甲斐あってこうしてレアキャラ(くらちゃん)を引っ張り出せたことは凄く嬉しいです。コメント嬉しい!

どですか?
次回、くらちゃんも是非♪

嘘・・・

こんばんわ~☆

間に合ったのね~お疲れさん!
病み上がりで忙しそうだったけ心配だったけど・・・
そんな心配も必要なかったくらいの作品できたね。

うん、すごいよ~楓さん♪
ホントに突っかかりなくスーッと入ってくる流れが好きですよ
楓さんの作品。
終わり方もなんか素敵・・・
こんな感じの嘘ならいくらでも読みたい。

つらい嘘は・・・辛くなるから・・・

>なぎちゃん

こんにちは☆
何とか間に合った!
正直、今回は(も)やべーピンチ!!!って思ったけど、無事体調回復。仕事もさくさく。おかげで多少なりとも推敲に時間が割けたのが大きかった。あ、推敲(すいこう)ってのは、自分が書いた文章をチェックして書き直したりすることね。

流れとかリズムとか、そういうのは凄く意識しているので、そう言ってくれると嬉しいです。突っかかる原因ってのは、色んな違和感で、例えば使っている言葉のチョイス(語彙)、比喩表現、主語述語や構成、リズムなんかがそうかな。そう言うものを考えながら書いてます。これがなかなか巧くいかなんだけど、だからこそコメントもらえると嬉しいんです。

辛い嘘はいけません。
「やだな」ってことがあったら、僕の小説を読みましょう!笑

泣きっ!!

泣けました~(TT)すごいよかった!!
心地よい言葉の中の風景、読み進めるうちに、あれ、あれ?
これは…。と。
言いたくても言えないことがあるから、ついウソになる。
素敵です~♪
さすがです!!
うん、いいです~。きれいな文章、これこそだな~。
推敲二日…。そこもさすがです。
私もいい加減書き捨ての文章をやめなければ~と、思うのですが…。
適当な性格が邪魔をして。としたら、楓さん、やっぱりとてもきめ細やかな心をお持ちですね(ため息)
次回よりまた、一段と楽しめました、掌編小説♪
また、来月(←遠い?)やりたいですね~♪

>らんららさん

こんばんは。
お返事遅くなりました。
すっっっっっっっっっっっごい忙しかったす(汗

泣けました?
やった!
今回は結構削ったので、正直不安はあったんですよ。描写の量はまあいいとして、展開が急じゃないか、書き足りてないんじゃないのかと。何せ字数が少ないので、どうしてもどこかを犠牲にしないといけないんですよね。それが辛かった……

推敲二日と言っても、つきっきりでやってるわけじゃなくて、単に初稿をあげてから投下するまでに二日かかったという程度です。ちなみに、最後の一行だけに丸一日かかりました。きめ細かと言うか、変にこだわっちゃうんですよね。どうもしっくり来ないというか。ただの凝り性です。こねくり回すのが好きなんですよ。なにせ趣味推敲ですから(笑

次回……9月もやっちゃいますか。
じゃあ、今度はらんららさんがお題決めて下さいね♪約束ですよー!

No title

じんわりきてしまいました。
言いだせない別れと、一つの季節が去るしんとした寂しさが相まって、胸に染みいる切なさがあります。
「あいつ」についた嘘。お母さんについた嘘。
大切な人だからこそ、ついてしまう嘘ってありますよね。
けれど最後、僕はきっときちんとお別れを伝えられたのでしょうね。
素敵な終わり方でした。


そして、私、すっかり締め切りを失念しておりました…
今回は参加できるかな?と思っていたのですが、うーん。
ですが、思いついた話があまり後味の良くないものだったので、
逆に良かったかも知れません(笑)
次回こそ、締め切りを忘れずに参加致します!(今、自分の首を絞めたかもしれない!)

>沖川さん

こんにちは。
なんと!読んで下さりありがとうございます。
夏休みの終わりって、何だかとてももの悲しいというか、人恋しくなりますよね。そこらへんと巧く融和できていたでしょうか。お褒め下さり嬉しい限りです。

お気づきのことでしょうが、右、左、というフレーズ、さくっと沖川さんのをパクらせていただきました。もうこの表現しかないと言う感じでございましたので一も二もなく。事後報告ですみません(をい:笑

今回は締め切ってしまいましたが、別に期日なんてあってないようなもの。もし既に何か書かれたのであれば、是非拝見したいです♪そうでなければ、是非ぜひ次回!恐らくまた月末くらいに開催しようと思いますので、その折りにはぜひともご参加下さると嬉しいです。

首、締めちゃって締めちゃって!コラwww
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楓 十色

Author:楓 十色
仕事との両立に悪戦苦闘しながら、それでも物書きを止められない人。工学博士(防災工学専攻)、技術士(建設部門)。

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